【仙台】予備的遺言とは|受遺者が先に亡くなった場合の備え行政書士が解説

「遺言書で妻に全財産を相続させると書いたが、もし妻が自分より先に亡くなったら、どうなるのか」

「高齢の兄弟に遺贈する遺言を書いたが、受遺者が先に亡くなるリスクがある」

「子どもに相続させる遺言を書いたが、万一のことがあったら誰に行くのか」

——このような万一の事態に備えるのが「予備的遺言(補充遺言)」です。遺言書で指定した受遺者が、遺言者より先に、または遺言者と同時に亡くなった場合に備えて、代わりの承継者を指定しておく仕組みです。この一文があるかないかで、相続開始時に遺言書が「無意味な紙」になるか「確実に機能する遺言」になるかが分かれます。高齢ご夫婦では、どちらが先に亡くなるかは誰にもわかりません。遺言書を作成した時点では元気でも、数年後の相続開始時には状況が変わっている可能性は十分にあります。この記事では、予備的遺言の必要性、書き方、注意点まで、実例を交えて詳しく解説します。

この記事でわかること

  • 予備的遺言とは何か
  • 受遺者が先に亡くなるとどうなるか(原則の扱い)
  • 予備的遺言が必要なケース
  • 予備的遺言の具体的な書き方
  • 複数段階の予備的遺言
  • 遺言の書き直しとの違い
  • 代襲相続との関係

はじめまして。宮城県仙台市宮城野区を拠点に活動している行政書士の髙橋誠です。遺言書作成の実務では、予備的遺言の記載は必須と考えています。しかし、遺言書を作成するとき、ここで悩んでしまうご依頼者様も多いです。確かにこの財産は○○にと決めていたのに「その先も・・」となってしまうのは当然のことと考えます。

なので、私は「宿題」として考える時間を多くとってもらうことを大切にしてます。

中には「今は思いつかないから・・」という方もいらっしゃいます。

その場合は「大丈夫ですよ」と返答しています。なぜなら遺言書は何度でも書き直しが可能であるからです。

予備的遺言とは

予備的遺言とは、遺言書で指定した受遺者(相続人も含む)が、遺言者より先に、または遺言者と同時に死亡した場合に備えて、代わりの承継者を指定しておく遺言のことです。「補充遺言」とも呼ばれます。

民法第994条では、受遺者が遺言者の死亡以前に死亡した場合、遺贈は効力を生じないとされています。この原則をカバーするために、予備的遺言が必要になります。せっかく遺言書を作っても、「ある条件下では無効になってしまう」のでは、遺言の意味が半減してしまいます。

受遺者が先に亡くなるとどうなるか

遺言書で「全財産を妻に相続させる」と書いていた場合、妻が遺言者より先に亡くなると、その遺言は原則として効力を失います。すると、該当する財産は遺言書がなかったものと同じ扱いになり、法定相続人全員で遺産分割協議をすることになります。

これでは、せっかく遺言書を作成した意味がなくなってしまいます。「もし妻が先に亡くなったら、子どもたちに争いが起きないよう、長男にまとめて相続させたい」と考えていたとしても、予備的遺言がなければその意思は実現されません。

「相続させる旨の遺言」の場合も、原則として受遺者が先に亡くなれば効力を失う、という最高裁判例があります(平成23年2月22日)。この判例以降、予備的遺言の重要性が強く認識されるようになりました。それまでは「相続させる旨の遺言なら代襲相続(子供が死亡した場合その子共(孫))に相続される」と考えられていましたが、この判例でその考えが明確に否定されたのです。

予備的遺言が必要なケース

以下のようなケースでは、予備的遺言が特に重要です。

  • 高齢の配偶者に全財産を相続させる場合
  • 高齢の兄弟・姉妹に遺贈する場合
  • 病気療養中の相続人への相続
  • 危険な職業(長距離運転、建設業等)の受遺者
  • 海外在住で健康状態がわかりにくい受遺者
  • 相続人が高齢で、同時死亡の可能性もある場合
  • 自然災害等の同時死亡リスクを考慮

特に、高齢ご夫婦では、配偶者が先に亡くなるリスクを現実的に考える必要があります。遺言書を作成した時点では元気でも、数年後の相続開始時には状況が変わっている可能性は十分にあります。

同じ事故や災害で同時に亡くなるケースも、予備的遺言で備えておくべき事態です。2011年の東日本大震災のような大規模災害では、家族が同時に亡くなるケースも実際に発生しました。

予備的遺言の書き方

基本的な文例は以下のとおりです。

「遺言者は、遺言者の有する一切の財産を、遺言者の妻 髙橋花子(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。ただし、妻 髙橋花子が遺言者の死亡以前に死亡し、または同時に死亡した場合は、遺言者の長男 髙橋太郎(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。」

ポイントは、「遺言者の死亡以前に死亡し、または同時に死亡した場合」という条件文を明記することです。この一文があるだけで、万一の事態にも遺言書が機能し続けます。

条件文の表現にはバリエーションがあります。「または遺言者と同時に死亡した場合」の部分は、民法第32条の2(同時死亡の推定)に対応するもので、必ず入れておくべき文言です。

複数段階の予備的遺言

さらに慎重を期すなら、複数段階の予備的遺言を書くこともできます。

「全財産を妻に相続させる。妻が先に死亡した場合は長男に相続させる。長男も先に死亡した場合は長男の子(孫)に代襲相続させる。」といった具合です。

ただし、あまり複雑にすると読み解きが困難になるため、3段階程度に留めるのが実務上の目安です。

代襲相続との関係

相続人(配偶者を除く子・兄弟姉妹)が遺言者より先に亡くなった場合、その子(孫や甥姪)が代わりに相続する「代襲相続」の制度があります。しかし、「相続させる旨の遺言」の場合、代襲相続が当然に生じるとは限らないとされています。

そのため、「長男に相続させる。長男が先に死亡した場合は長男の子に代襲相続させる」と予備的遺言で明記しておくのが安全です。「代襲相続は当然に起こるだろう」という思い込みは禁物で、必ず文言で明示することが必要です。

遺言書の書き直しとの違い

「受遺者が亡くなったら、遺言書を書き直せばいいのでは」と思われるかもしれません。確かに、意識がしっかりしていて、書き直す時間があれば、それも可能です。

しかし、現実には書き直しが困難なケースも多くあります。認知症の進行、急な体調悪化、遠方での生活、精神的ショック等で、冷静な判断ができなくなることがあります。配偶者を失った精神的ショックで、遺言書を書き直す気力が湧かないことも珍しくありません。

「書き直せばいい」と考えるより、「書き直せない事態」も想定して、予備的遺言を最初から入れておくのが賢明です。特に、高齢になってからの遺言書作成では、「作成した時点が最後のチャンス」と考えて、将来起こり得るあらゆる事態を想定した設計が必要です。

当事務所での実務

当事務所で遺言書作成をお引き受けする場合、原則として全てのご依頼に予備的遺言を組み込みます。「万一のときどうなるか」を考えずに作られた遺言書は、プロの仕事とは言えないと考えているからです。

特に高齢ご夫婦のご相談では、「お互いにどちらが先に亡くなっても対応できる遺言書」をワンセットで作成することをご提案しています。夫婦2人で同時に作成することで、どちらが先に亡くなっても意思が反映される設計になります。

子供のいないご夫婦では、配偶者の兄弟姉妹・又は甥姪が法定相続人になるため、夫婦ワンセットの遺言書を特にお勧めしております。兄弟姉妹には遺留分がないので、遺留分侵害額請求をされるというリスクがありません。

※遺留分につくいてはこちらの記事をご覧ください

公正証書遺言での予備的遺言

公正証書遺言で予備的遺言を入れる場合は、公証人が適切な文言で起案してくれるため、形式面の心配は不要です。自筆証書遺言よりも、予備的遺言を正確に反映しやすいメリットがあります。

公証役場での打ち合わせの際、「もし妻が先に亡くなったらどうしますか?」と公証人から質問されることが多く、予備的遺言の必要性を再認識する機会にもなります。

それでも悩む場合

予備的遺言の設計は、ご家族構成や受遺者の年齢・健康状態等を踏まえた判断が必要です。宮城県仙台市の行政書士髙橋誠事務所では、万一の事態まで想定した確実な遺言書作成をサポートします。

まとめ

  • 予備的遺言は受遺者が先に亡くなった場合の備え
  • 相続させる旨の遺言も、原則効力を失う
  • 高齢配偶者・高齢兄弟への遺言には必須
  • 条件文を明記する書き方
  • 複数段階も可能だが3段階程度が実用的
  • 代襲相続も明示的に書く
  • 「書き直せばいい」ではなく「書き直せない事態」に備える

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